江戸時代末期、弊店初代の小峯門弥(こみねもんや)は、茶人としても知られた、時の小田原藩主大久保侯の料理人頭、御台所目付兼帯としてお仕えしておりました。御用の傍ら、将軍家への献上品、あるいは参勤交代で小田原を通る諸国大名の接待に、風雅好尚の品を吟味する光栄にあずかりました。その料理の腕は江戸まで知れ渡り、黒船来航の際の接待にも料理を供したとの言い伝えもございます。

明治維新により御暇をいただき、明治4年、料亭を開業することとなりました。その庭は細部に趣向をこらした造りで、高床式の座敷の下を小川が流れる仕組みになっていました。開業にあたり大久保侯より「座敷で横になると、あたかも流れに枕するかのようだ」との御言葉をいただき、屋号「枕流亭(ちんりゅうてい)」を賜りました。

「枕流亭」は、小田原の海の幸・山の幸をつかった料理で評判を呼び、とくに漬物や菓子が好評で、お持ち帰りを希望されるお客様が多かったため、2代目徳二郎は、漬物製造および販売を主とすることとし、小田原駅開業に合わせて小田原駅前に店を構えることになりました。当時としては流行の最先端をゆく洋館づくりの店は、小田原駅前のシンボル的存在であったようで、できたばかりの小田原駅と相まって、新しい時代の幕開けを感じさせるものでした。

その後、屋号を読みやすく「ちん里う本店」と改め、今も小田原駅前で「品質」にこだわり、「昔ながら」の味にこだわり、でも「新しいもの」への挑戦も忘れずに商売を続けております。3代目以降、全国各地の百貨店とのお取引も広がり、現在の5代目店主は、十数年ヨーロッパで暮らした経験を活かし、初代から受け継いだ、「古きよきもの」を守る信念と、「変えていく、生み出していく」勇気を心がけて、新しい商品群の拡充、海外への販売などを展開しています。